白壁の町に住み継ぐ家

第七章 秋から冬へ
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第一節 10月

10月初旬はF建設で新たな家の建て方があり、大工さんはしばらくそちらへ応援に行かれるので、我が家の工事の方は一休みとなりました。4日に蔵の床下にミラフォームが敷かれ、土間コンクリートを流す準備をされていた程度です。

季節はすっかり秋となり、雨の降る日も増えてきました。やや強い雨が降った翌日、屋内を見てみると台所の窓の下あたりが濡れています。雨漏り?、どうやら天窓から漏った様です。Fさんに見に来て貰うと、天窓の水切りの施工がまだ完全に済んでいないため、そこから漏ったとのこと。その後きっちり施工された後は、更に激しい雨が降ったこともありましたが、もちろん雨漏りはありません。他の天窓も同様です。

12日から再び木工事が始まりました。外壁の焼杉を張る為の、下地作りから始まりました。14日から焼杉が張られました。昔の焼杉と異なり表面処理されているものなので、少し触ったくらいでは指に炭は移りません。一面に張られると、清々しささえ感じる仕上がりになっていました。その上黒枠にしたサッシがぴたっと決まり、窓枠が壁に溶け込んで一体感が出てきました。

18日、子世帯リビングの床、Jパネルが張られ始めました。南端にはOMの暖気吹き出し口が開けられますが、そこにはオーディオ機器を並べる予定なので、半間手前に移動して貰いました。
実はこのJパネル、製造していたメーカーが倒産してしまいまして、その後別の会社で同じ物を製造しているものの注文が殺到し、入手難になっているそうです。我が家の分は間に合いましたが、採用予定されていた方で変更を余儀なくされたという話も聞きました。また、今は杉のパネルだけ作っているそうで、我が家で使っているカラ松のパネルは現在はまだ作っていないそうです。

外回りの工事としては、板金屋さんが来て各部の水切りを施していました。銅板で葺いて行くので最初はぴかぴかに光っていて派手でしたが、一雨毎に酸化が進み、黒っぽくなってゆきます。
長屋の南側窓の庇も新しい銅板葺きに変えられました。

  北側。焼杉が張られ、水切りが施されています。21日秋祭りだったので、幟(のぼり)が立っています。

23日には子世帯リビングの床が張られ終わりました。この日現場に来られたFさんと打ち合わせをし、蔵1Fの天井は張らず、2F床をそのまま見せることにしました。床として張られているJパネルの裏側が意外と綺麗だったからです。

24日、蔵の入口上の庇が組まれ始めました。蔵らしくということなので、瓦を乗せた漆喰塗りの庇になるそうです。その庇を壁の柱から支える木組みには、フォルクスハウスの梁に使う集成材と金具が流用されていました。前年に建築したフォルクスハウスで使った材料の余りだそうです。
庇はラスボードで囲まれ、上側には瓦が4列程乗せられました。

蔵の庇はこれで決まりましたが、玄関の庇をどうするかが課題となりました。当初予定されていた長めの庇は、玄関サッシと屋根との間隔が小さい事等で付けられないので、もっと小さい物にするか、逆に柱を前に立てて支える和風の大きな庇にするか、両親と相談することにしました。

さて、そろそろ親世帯システムキッチンの仕様も詰めなければなりません。調理家電置き場を変更したので、収納をもう一度見直しました。とはいえ予算が限られている、というかシステムキッチンに関してはとうにオーバーしているので、これ以上コストはかけられません。思案した結果、下部にオープンスペースを取ったカウンターを調理家電置き場とする方法としました。元々コンセントは100cm程度と高めの位置に取ってあったので、カウンターを付けるとちょうどいい高さになります。下のスペースにはゴミ箱等を置きますが、精米機を置くことも想定して、カウンター下にコンセントを追加して貰いました。

キッチン回りではもう一つ、浄水器についての検討もこの頃行いました。現在蛇口取付タイプの簡易清水器を使っていますので、今度はもう少し高性能な浄水器を付けたいと思っていました。知人の家に行きシーガルIVの水を試飲させて貰ったり、Niftyやweb上で情報を集めたりしました。最終的に入手しやすい三菱レイヨンか、「料理の鉄人」で使われてもいたシーガルIVか、というところで迷いましたが、シーガルIVを輸入すれば国内取扱品に比べぐんと安く付くことがわかり、webで探した米国販売店に注文し、親子両世帯共取り付けられる様になりました。これに合わせて、混合栓=シンク蛇口も浄水兼用タイプを探して採用しました。子世帯キッチンではシャワー引出し式の浄水兼用タイプを、親世帯キッチンでは通常吐水の浄水兼用タイプとしました。親世帯のTOYOキッチンでは元々MYMの水栓がついています。それと同デザインで浄水兼用品がありましたので、カウンタートップ変更等なしに組み合わせることができました。以上の内容で、再度見積を出して貰うことにしました。

届いたシーガルIVの中身。

 

第二節 11月

 外回りは銅板による水切りの施工が進み、室内は内装の下地工事が引き続き行われています。それに並行して電設作業も進み、コンセントやスイッチボックスが壁下地や柱に取り付けられていきます。

4日、蔵の室内側出入り口に引き戸の鴨居がついていました。防音の為引き戸ではなくドアにしていたと思っていましたが、ちょうどFさんが来たので聞いてみたら引き戸でしているとのこと。変更できるか聞いたところ、なんとかドアにできるということなので、変えてもらうことにしました。大工さんはちょっと「...」な表情だったのが申し訳なく思いました。後でメール送信記録を確認したところ、それらしき内容の連絡をしておらず、口頭で言った<つもり>だった事がわかり、またこちら側の反省材料が一つ増えてしまいました。
その日父も来ていたので、玄関の庇についてもFさんと相談しました。柱を立てて深めの軒をつけ、柱を利用した袖垣をつける様に頼みました。これでまたかなりの予算オーバーになりますが、ここは責任持って父に出して貰うこととします。

7日、前日より加工されていた集成材で子世帯側階段が組まれ始めました。翌日には完成し、養生も済まされまして、それまで2階へ上がるのに架けられていた梯子がやっと外され、2階へ上がるのが楽になりました。勾配は割と緩く、手すりがない状態でも危ない感じはありません。

10日、2階寝室の壁の石膏ボードが張られ始めました。こちらの部屋は当初カラ松合板の予定でしたが、真壁の塗りで仕上げるということなので、それでOKとしました。
階段下収納の扉について大工さんと相談し、リビング側の開口を高さを半間ほど取ったものにしてもらうことにしました。小さな開口なので、それほど便利な収納にはならないとは思います。

子世帯リビングの壁については、予定していたカラ松合板は割れるので使えないとの話が出ました。昼前にFさんも来て相談したが、代替材料のいい案は出ず、翌日ちょうど材木屋展示会があるのでそこで探してみるとの事でした。
蔵の壁は、防音の為厚みがあるものを希望したら、床材であるホワイトウッド24mmを横に張るのはどうかという提案を受けました。棟梁もオススメの材料であり、それにすることに決めました。コストは結構上がりますが、天井を張るのを止めた分をこちらに回すと考えることにしました。

さて、春から何度もプランを出して貰ってきた親世帯キッチンの最終仕様をそろそろ決めましょう。
14日、母とトーヨーキッチンへ行って、先月貰った変更後の見積を元に最終プラン打ち合わせをしました。現物そのものはないのですが、同様の設備を見ながらそれぞれについて確認していきます。
母は換気扇フード横に設けた黒のオープンボックスが気になっていました。ごちゃごちゃ物を放り込んだのが見えるので格好悪いというのです。実は値段だけで言うと、普通の扉付き吊戸棚にした方が安いのです。使い勝手としては、常用する砂糖や塩といった調味料を置く場所を想定しているので、オープンの方がいいでしょう。デザイン的にもワンポイントで入っている黒がアクセントになって良いと、トーヨーのアドバイザーも言います。ここは原案通り、オープンボックスとすることにしました。
シンクカウンター高さは標準で85cmです。母の身長からするとこれはやや高いでしょう。ただトーヨーキッチンのシンクの場合、まな板はシンクの2段溝の下にはまるようになるので、カウンター面より更に2cmぐらい低くなります。その高さは80cmのカウンターにまな板を置いた高さと大差ないと言えます。
最近他社キッチンで流行の、ケコミ収納があるタイプのものは、高さ85cm固定で変更することは出来ません。トーヨーキッチンではそれを採用しない方針だそうで、その為支柱の高さを変えることは出来ます。コストアップはあるのですが、結局カウンター高さを80cmに変えて貰うことにしました。奥行きのあるカウンターであるので、まな板だけの話では済まされず、例えば水栓が届きにくいことも予想され、高さを抑えることにしました。これで母のキッチンは決定です。

14日、雨樋が順次かけられはじめました。これは板金屋さんが行いますが、いつも来ていた若い兄さんではなく、そのお父さんが来て取り付けていました。入母屋屋根の反り返った角の処理なんかが、見た目以上に熟練が要るのだと、Fさんが教えてくれました。

15日、子世帯リビングに杉板の天井が張られ始めました。白い木地と赤っぽい木地が混じっていますが、年月を経過するにつれて、黒っぽくなっていくのでしょう。

さて、この頃私と母の論争が再燃しています。それは「床下収納」についてです。
母は断然必要と言い、私は要らないと主張します。母達が今住んでいるミサワホームの家の台所には、当時は流行の先端だったのでしょう、床下収納庫があります。酒やら醤油やらを貯めこんでいるみたいです。
今度の家の台所はしかし、床下収納が付けられません。OMソーラーの為、床板と蓄熱コンクリートの間が20cmもない程の隙間なので、収納を付ける余裕がないのです。また、もし付けたとしても、20℃以上の空気にさらされる場所なので、食品類の保存に向いている環境とは言えません。
もっとも我が家の場合、全館OMソーラーではありません。台所から一歩出ると普通の床下構造になっています。母はこの部分、廊下に床下収納を付けろと言い出しました。
一応廊下の床下収納について棟梁に尋ねたら、取付は可能とのこと。階段下スペースも、今付いている火打ちは取って構わないので、こちらもできると聞きました。しかし廊下に床下収納をした場合、その周囲の床が弱くなって軋むのは避けられません。web等で調べたり意見を聞いたりすると、まず廊下には床下収納はつけないこと、蓋を閉め忘れた時の落下等の危険性をはらんでいるので今では床下収納を使わない主義の建築家もいること、等を知りました。
「床下収納に何を入れるん?」と母に聞いてみると、「そりゃぁ場所があれば何か入れる」と答えられました。要は明確な収納プランがあるのではなく、とにかく収納がなんでも欲しい、床下を収納に使わないのはもったいない、と思っている様子です。しかしそれも「父と母と、還暦過ぎた二人だけの食事で何をそんなに取っておくの?」という妻の質問には窮してしまい、床下収納の件はボツとしました。しかし母はこの後もしつこく大工さん達にこぼしている様です。
ちなみに親世帯階段下には茶道用の「水屋」を設けますが、その部分には床下収納をつけることになりそうです。ここだと廊下の土台をまたいだ場所なので軋みはでないこと、人が歩いて入れる場所でないこと、普段扉で隠れる場所であることから、問題はありません。

さて、検討中の子世帯リビングの壁板サンプルが一つ浮上しました。OSBの一種で白っぽい木が中心になっているものです。模様としては普通のOSBより色が明るく面白いですが、”樹”としての存在感がなく、この柄が壁一面となると圧迫感がありそうに思え、結局それはボツになりました。
また米松の合板も候補に挙がりました。木目自体は悪くないのですが、元々構造材用途なので表面は仕上げなしで荒れています。削って表面を均すには厚みが足りません。最終的に採用したのは原案通り、カラ松合板でした。子世帯リビングから裏口ホール迄はこの板の下側に杉の腰壁を付けることにしました。このカラ松合板にはオスモカラーは使えません。「柿渋でも塗ってみますか」

24日、蔵1階の内壁工事が始まりました。内装の板を張る前に、防音シートが張られました。
蔵2階ではほこりだらけだった天井裏梁の掃除もされていました。
夕方父と母が来て家を見ていました。母は大工さんと水屋や茶炉についてあれこれ話をしていた様子です。

翌日から、蔵1階の内壁にホワイトウッドが張られました。窓が小さいので暗い部屋ですが、ホワイトウッドを張ると少し明るい雰囲気が出てきました。床も壁も厚い材料ですから、オーディオを鳴らす部屋としてはなかなか好都合で、少々の音量でビリつく様な事はないでしょう。
母屋2階の天井に続いて、子世帯ゾーンの長屋の天井も張られました。両方とも杉板の船底天井になっています。母屋の2階はかなり高い天井となり、部屋の仕切壁がないことと相俟って、開放感のある明るい空間になりました。

母屋2階の天井の様子。

 

第三節 12月

内装工事が続いています。蔵2階の天井杉板も張られました。この辺りは既存の地松の梁との収まりを現物に合わせながらの作業ですので、結構手間がかかっている様子でした。

4日、左官さんが外壁に取りかかり、漆喰塗り下地のモルタルを塗ることから始められました。

5日、母屋2階子供部屋の壁板が張られ始めました。カラ松合板は一応内装向けに表面を仕上げられているので、構造用のものほど荒れた素地ではありません。とはいえ、よく見かけるラワン合板に比べると表面は粗く、節も多い材料ですが、むしろそこから「木」らしさが感じられます。

12日、蔵の廻り縁や長屋の鴨居などの造作が始まりました。窓枠は階段と同じ、ゴムの木の集成材で組まれています。

14日、杉の腰壁が張られ始めました。ここの材料は節のない綺麗な木目の板です。ただ長さが短いので、これだけを使って壁を張ってしまうことができないのが残念です。
同じ日に工務店事務所を訪問、壁紙その他の相談をしてきました。クロスを張る場所は多くはありません。親世帯トイレは妻の要望で遊びを入れ、下部が太い竹のクロス、上部が和紙調クロス、天井があじろ調クロスと、民芸調内装としてみます。洗面所はトイレの上部と同じ和紙調クロスを壁に張り、天井のクロスは隣のキッチン&リビングと同じオフホワイトのクロスを張ります。

蔵2階には本棚がたくさん欲しいという妻の要望で、本の大きさを検討した上で、壁面に造り付けて貰うことにしました。20日、その造り付けの本棚がほぼ完成しました。棚はゴムの木の集成材、壁は腰壁に使われた杉板になっています。南北の面それぞれいっぱいに本棚を付けて貰いました。特に南面は小窓を囲う形で棚が付けられ、その前に文机を置いて床に座って読書をするのがぴったり合う場所となりました。しかしこの部屋はLAN配線のハブが置かれる場所であることから、パソコン部屋にもなる場所です。それを聞くと妻は嫌そうな顔をしていました。

蔵2階北側の造り付け本棚。

22日、子世帯リビングの壁にもカラ松合板が張られ始めました。

26日、工務店のFさんが子世帯キッチンのシンク壁と換気扇、反対側のカウンターの構成案を出してくれました。ここの換気扇は凝ったものでなくてよいと思っていたところが、梁がちょうど出ているので薄型のレンジフードにせざるを得ず、シロッコファンの比較的新しい型の換気扇になってしまいました。それらの事などを幾つか打ち合わせしている時に建具屋さんが来たので、母屋2階の子供部屋本棚造作についても話をしました。子供部屋に間仕切りとなるような大きな本棚を造り付けようかと考えていたので、それについて相談しました。また引き戸等の建具についても打ち合わせました。

29日、本年の仕事納めの日です。
思えば当初はこの年の暮れに新居を完成させようと思っていました。建て始める前にも建て始めてからも色々な事が起こり、現時点ではまだ完成までに2,3ヶ月要する状態です。
現場での変更も数多くなってしまい、その都度大工さんには手間をかけさせてしまいました。

しかし注文建築だからこそ、ワガママも言えますし臨機応変な対応もして貰えます。細かいことを一つ一つ考えていくことは骨が折れると思う方もおられるでしょうが、来るべき新しい生活に対して思いを馳せる楽しみだと、私はそう思っています。

私達の家作りはもう折り返し地点を過ぎていますが、ゴールは間もなく見えてくるのでしょう。

 

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