白壁の町に住み継ぐ家

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第一節 要求仕様

おじいさんが亡くなって少し経った頃から、”新しい家”をどんなものにするかを真面目に考え始めなければならないと思いました。家族それぞれ自分の希望はたくさんあるはずです。その上暮らしぶりの異なる二世帯が同居するのですから、なおのこと各々の意見を出し合って話し合わなければなりません。

この時点での家族の要望の大まかな部分をまとめてみましょう。

父:
・入母屋の瓦屋根
・蔵のある家・二間続きの和室に床の間と違い棚付。
・洋間の応接間

母:
・茶道用の炉を設けた和室。
・和室の縁側は広縁。
・日当たりと風通しの良い部屋。
・広い台所。

妻:
・民家風の外観
・木の家。
・読書室。

私:
・高断熱の、夏暑くなく冬寒くもない快適な家
・太陽熱利用の省エネ
・ノンホルムアルデヒドは当然として、健康的に住める家
・仕事場の部屋

私は上記の内容を更に掘り下げ、今使っている家具や電気製品の状況といった現状の生活を見つめ直したりして、新しい家の要求仕様なる資料を作成しました。これは@niftyのマイホームフォーラムや、web上のホームページで、施主側の要望事項を書面にしておくのが施主も設計する側も理解が高まって良いという情報を得ていたからです。資料に記載する項目もweb上で紹介されている記入例や、工務店がくれたチェックシート等を参考にしながら、まとめていきました。その資料はおおよそ20頁強のものとなりました。『こんなことをしているのは聞いたことがない』と家族の者は驚いていましたが、私としてはむしろ当然な事と考えていましたし、資料として具体的な形として整理したことで、自らの考え自体を見つめ直すこともできたと思っています。後にこの資料は「やどかり亭」ホームページにアップ、公開しています。

この資料、決して十分だと言えるほどのものではありません。間取りを含む家の仕様を決めていく段階で、これに記載できていない事がその都度出てきたりしましたが、最初の建築依頼をするときに、自分達の意志を相手にできるだけしっかり伝えるという点では、かなり役に立ったと言えそうです。
ホームページ内に家についてのページを設けたことも、後々役に立ちました。

また、現在の羽島の家を理解・把握するため、パソコンの間取り図作成ソフトである「一軒楽着3D」で、間取り図を書き起こしました。なんとなくわかっていたつもりだった羽島の家の実態が、生活動線が長く複雑であったり、風通りが良くないことが一目瞭然だったりと、図面化により明確になりました。
この図面は、前述の要求仕様の一番最後のページにも付け加えておきました。

これらの資料を抱えて、どこへ建築を依頼すればよいか、交渉を開始することになります。

 

第二節 OMソーラー

OMソーラーの事を知ったのはNifty-Serve(現@nifty)のマイホームフォーラムからです。太陽熱利用の床暖房と知り、”おもしろそうだな”と感じました。岡山県はキャッチフレーズを「晴れの国」と謳っている通り、雨の日が少なく晴れの日が多いので、太陽熱や太陽光利用には特に向いている土地柄だと思ったからです。そう言えば近所には、太陽熱利用の温水装置が屋根に上がっている家が少なくない様です。

OMソーラーに感心したのは、床下のコンクリート層に蓄熱することによって日没後も暖房効果があること、夏は太陽熱で温水が得られること、床下に温風を送ることにより基礎が湿気で痛んだり白蟻にやられる心配がないこと、です。それが比較的簡単な構造で実現できるところにも、興味を引かれました。

問題はコストがかかることもありますが、施工できる工務店が特に限られていることがネックでした。しかし岡山県内で当時3社あったのは幸いでした。

しかしOMソーラーには思わぬ致命的な欠点があったのです。それは屋根に集熱用のガラスパネルが乗るということから、瓦葺入母屋屋根を絶対条件にしている父が「見た目が不細工」という理由で断固反対したのです。冊子で入母屋の屋根にOMソーラーを搭載している事例の写真を見ても、納得するどころか、よけい反対する意志を強固にした様でした。(同様に太陽電池パネルを載せることにも反対でした)
近所の知り合いの工務店で出来ないということも、欠点と言えました。

 

第三節 候補者選び−F建設

2月のとある日、OMソーラーについて話を聞こうと思い、F建設に連絡を取り訪問しました。まず、事務所には靴を脱いで上がるのですが、スリッパがなかったのに少なからず驚きました。実はOMソーラーによる太陽熱利用床暖房のいわばデモンストレーションで、床暖房による暖かさをそのまま体験できるという仕組みだったのです。

色々と話を伺い、屋根裏の装置まで見せて貰ってOMソーラーのしくみ・動作については大方理解できました。それとは別に、施工事例だけに留まらず、使用している木材の種類を色々紹介してくれたり、断熱についての考え方を教えてくれたりと、予想していたよりもかなり話ははずんで、手応えを感じて帰ったことを憶えています。

3月の下旬、F建設の現場見学会があったので、父母も連れて見学に出かけました。思えばこれが初めての現場見学でした。雨が降っていたのでOMソーラーの太陽熱の恩恵は確かめられず、灯油ボイラーで太陽熱の代りに床暖房していた状態で体験しました。それでも床自体は暖かく、雨が降って肌寒い中、室内は快適でした。しかし家の造りが変わっていて、広いワンルーム的なリビングの端にこじんまり収まっているアイランド型キッチン、2階はフルオープンスペースで、なんと便所(便器)までオープン。内装は構造材そのものに仕上げもせず露にしており、ボルトはもちろん、普通は下地に使われる材のJASマーク刻印まで見えていました。和室スペースに茶道用の炉が切ってあったので、母はそれに興味を示していましたが、父には作りかけのとんでもない家と映った様でした。私は、連れてきたのは失敗だったかもしれないと思いました。後で聞くと、工務店側もここを最初に見て貰ったのはまずかったと感じていたそうです。

その後F建設の見学会には数度出かけました。RC造の家や、在来工法の和風住宅も見て、それぞれに特長があり興味深かったのですが、父の考える「家」(入母屋屋根の純和風家屋、蔵付)とは全く別物であり、良い印象を与えるには至りませんでした。屋根の上にガラスパネルが乗っていたのも、どうしても許せなかったらしい。

とはいえ、F建設を候補の一つに挙げようとは思っていました。入母屋の純和風住宅(そこはOMソーラーは採用していない)も手掛けていたり、近所に住んでいた知り合いのお宅を建てたりしていたからです。10月に再びF建設事務所を、今度は妻と一緒に訪ね、要求仕様書を渡して基本プラン作成を依頼しました。それまでに見学会現場で顔見知りでしたが、ここで妻はじっくり話を聞くことが出来、OMソーラーのしくみだけでなく快適な家を作るための様々な事柄について知ることが出来ました。実際にプランを進める専務の方だけでなく、営業をやっているその奥様も気さくな方で、何よりご両人の人柄の良さは大きなポイントでした。

 

第四節 候補者選び−近所の知合い其の一

元々父は、おじいさんの代以前からのつきあいがあり、今の実家の普請もしていて、その上父の同級生でもある近所のT住宅へ建築を頼めばよい、と思っていました。県道を挟んですぐのその工務店は、この辺りの家の多くを建てています。実家隣のおじさんより我家が新築計画中であることを聞いたとかで、ある日その工務店の奥さんが我家に来て『是非ウチでお願いします』と頼みに来たこともありました。

そういう経緯もあり、一度話を聞いてみようということで、家族揃ってその工務店事務所へ出かけてみました。父と同級生という年配の方で、口数の多くない人でした。今計画中という、とある家の図面を見せてくれました。方眼紙へフリーハンドで間取を書いているものでしたが、別に手で書くのが悪いというわけではないということは頭では理解しているものの、『これで大丈夫なのか』と不安感は拭いきれなかった印象が残っている様な、簡単な間取り図でした。

話をしてみても、例えば
父:「こんどの家は娘家族との二世帯住宅にしようと思っている。」
T氏:「二世帯住宅はやったことがない。大抵ここいらの親子は一つ屋根の下で同居している。」
と返ってくるし、
私:「今の家は隙間だらけで寒いし日当りも悪い。」
と言えば
T氏:「最近建材から出るガス(VOCの事)が悪いと言われているから、昔ながらの隙間が多い家が良い。」
と言われるしで、どうもこちらの意図を解してくれず会話がなかなか繋がりません。色々聞きたいことはあったのだけれど、それを尋ねる気にはなれませんでした。こちらとしてはプロの立場からの色々な提案を期待していたのですが、それらしき事はついぞ一つも聞けなかったのです。

それでも、後日要求仕様資料が出来てからもう一度詳しく話を聞いて貰おうと、今度は実家に家族が集ったところへ来て貰いました。20枚を越す資料をめくりながら『これはワシの手には負えそうにないかな』などと呟くのを聞きながらも、こちらから幾らか補足説明をしました。資料の説明をしている最中に、母からクレームが付きました。それは資料の始めの方に付けていた家族の紹介ページについてです。

母:「身内の事情を他人に教えて欲しくない。」
私・妻「自分達の事を知って貰わないと私達の望む家を建てて貰えない。」
母:「Tさんは古くから付き合いがあるので私達のことはよく知っているからこんな資料は要らない。」
私・妻「少なくとも私達の事はほとんど知らないはず。だから必要だ。」

と大口論になってしまいました。結局その場で要求仕様資料の、家族紹介部分をはさみで切り取ってしまいました。

建築期間の話に及んで、住宅ローン減税対象期間である2000年年末(当時)迄に建てたい旨を言うと、現在やっている仕事があるのでそれはできそうにないと、答えられました。仮にも一度建てさせて貰えないかと言っておいて、今になってそれはないだろうと内心思いはしましたが、期限を延したくないのは家族全員の希望でもあったので、ここは諦めざるを得なくなったのです。

後から思い返してみると、建築時期を理由にしたのは方便だったのかもしれません。話し合いの場で口論するほど要求が厳しいと感じ、引いたのではないでしょうか。でなければ、近所で代々お得意さんでもあるところの、決して小さくない物件を易々と逃すとは思えないからです。

その後T住宅から一人の設計士の方を紹介してくれました。その方のHomepageを印刷した物を持ってきてくれたので、早速e-mailで連絡を取ってみたのです。

 

第五節 候補者選び−古民家再生

その設計士、O氏は倉敷を中心に活動している古民家再生を主としている建築家グループ、”倉敷建築工房”の一人でした。妻は以前から古民家再生に大変興味があって、そのグループの出している本を買ったり、早島の古民家再生の「いかしの家」に出かけたりして研究していました。そして自分たちの古い実家の再生ができないかと考えていたので、”渡りに船”という状況が転がり込んできたのです。

10月22日夜、O氏の事務所に出向いて、話を伺いに行きました。私が作った資料はT住宅からO氏に渡されていて予め目を通してくれていたので、話はスムーズにできました。純和風の自然木を用いた家、というコンセプトは私達の要求にあっていたし、何より再生できる対象があるということがお互い大きな利点でした。

ところで私は近所で目に止った和風住宅の写真をデジカメで撮影し、コメントを少々加えて外観参考のための資料を作っておりました。これをO氏に見て貰ったところ、その半分くらいが実は”倉敷建築工房”のグループの手によるものとわかり、逆に私達の方が感心させられてしまいました。外観デザインでは文句無しに期待通り、いやそれ以上のものができそうだという手応えを感じたのです。

まずは基本プラン作成をお願いして、候補者選びのテーブルに乗って貰うこととしました。

11月初旬に、「はしまや」という倉敷建築工房のN氏が手掛けた蔵を改装した喫茶室で、そのN氏の作品写真展があったので見に行きました。O氏が独立するまで仕事していたのが、N氏の設計事務所だったそうです。前述の近所の和風住宅や、他にも見覚えのある家が多くそこに出ていました。黒い焼杉に白漆喰、そこに木のアクセントをセンスよく配したのが、デザインの基本の様です。昔ながらの外観でありながら古ぼけた感じは全くなく、新たな「羽島の家」に相応しい外観がそこにあるような気がしてきました。

 

第六節 候補者選び−近所の知合い其の二

この時点で基本プラン作成を依頼しているのが二者となったわけですが、父の希望でこれまた近所のT設計事務所にも当ってみることにしました。実家の裏から石を投げると届きそうな、ご近所さんです。

ここの建築家は純和風の家を主に設計しているので、その点ではこちらの希望通りと言えます。設計士の仕事として、設計だけでなく施工管理の重要性も強調するなど、こちらが建築家に対してイメージしているメリットにつながる話を聞かせてくれ、まずは安心しました。

こちらの希望であるところの2世帯住宅を建てたいと言うと、
T氏:「2世帯なら親子それぞれの部屋がこれとこれがこう並んで...」
とそれまで蓄積されたであろう設計例からざっと間取を言出してくれるところなど、経験の豊富さがにじみ出てきます。が、逆にパターン化された間取にしかならない様にも思え、それは
T氏:「和式の家はお金はかかります。お金で仕上がりが決まります。」
と断言されたところからも、感じられたのでした。

ふと本棚の片隅に置いてあった鶴野晴山の家相本が目に入ったので、
私:「家相についてはどうお考えですか?」と尋ねると、
T氏:「家相は昔からの言伝えですから守らなくてはいけません。」
と返ってきました。この後家相についての蘊蓄が続きましたが、先の本の受け売りだったのでこちらは上の空、『だめだこりゃ』と踏ん切りがついたので持参していた要求仕様書は結局出さず、そそくさと退散したのでした。

webや@NIFTYのフォーラムでも大概の建築家は家相には否定的であるという印象を持っていただけに、その正反対の建築家に出会ってしまったことに、妙に感心してしまいました。

 

第七節 候補者選び−U建設

OMソーラーについて調べていた頃、OMソーラーでやっているイージーオーダーとも言えなくはない「フォルクスハウス」というのも一度見てみたいと思い、それを常設展示場としているU建設を訪問しました。展示場にはベテランの営業マンがおり、丁寧に説明してくれました。フォルクスハウス自体は我家の要求する純和風家屋とは別物なので直接参考にはなりませんでしたが、「木」を前面に出した内装は好感が持てるものがありました。もし親世帯の要求がなければ、フォルクスハウス採用もあったかと思えるほどです。

フォルクスハウスを見に行ってから後、2回ほどU建設の営業マンが尋ねてきてました。フォルクスハウス展示場にいたベテランの営業マンで、静かな口調ながら話は上手い人です。しばらく音信は途絶えていましたのですが、10月31日、別の若い営業マンがやってきました。

玄関先で立ち話をし、『是非プランを作らせて下さい』と言うので了解しました。若いだけあってやる気が感じられ、人柄そのものはまずまず好印象でした。けれど、こちらとしては何の連絡もなく営業マンが変わったことについての不安が顔を覗かせていたのも確かです。まだ何も手を付けていない状況だから引継ぎが少々出来ていなくても問題はないけれど、これが契約後、建築途中、引渡前だったらどうなのか...という不安がよぎるのです。

11月11日、実家に家族を集め、こちらの要求を聞いて貰いました。U建設は営業マンと社長、設計担当の三人がやってきて、予め伝えていたとおりに、既にHomepageにアップしていた我家の要求仕様をダウンロード→プリントアウトしてチェックしていました。

設計担当の方はぽつりぽつりと質問を出してこちらの回答を確認していました。いつのまにやら社長が中心になっての話が進み、純和風の家を作ることは得意であることや、徳島の葉枯らしの杉材をはじめとして自然素材中心の家作りを行うこと等をとくとくと語ってくれました。さすがに百戦錬磨の社長の話術は巧みで、この人に建築を任せておけば安心と思わせられます。逆に営業マンはほとんど口を開かず、そりゃ社長の前では控えめにならざるを得ないのもわからないではないですが、話合いの場をきちっと仕切ってくれなかった点は、いささか頼りなく感じました。

話の場でも、父はOMソーラーに反対という見識を明確にしていました。それは屋根にガラスパネルが乗ることの、見た目の問題です。そこで社長から、
「例えば越屋根風にしてデザイン的にうまく処理できないだろうか。」
と提案が出て、対策を講じる様な発言が出ました。実は私もOMソーラー採用の為、屋根にガラスパネルを乗せずに済む方法として似たようなことを考えていたところなので、この発言には期待をかけたのです。

話の後、実家の造りを見て貰いました。『なかなかしっかりしているのでこれを壊すのはもったいない』との社長の言葉で、蔵と納屋・離れは改装に留めるという路線が出されました。これもどういう風に活かしてくれるのか、楽しみになりました。

 

第八節 基本プラン其の一

最初にプランが出たのはO設計士でした。基本プラン作成前の実家調査では、アシスタントの女性二人を伴い、柱の位置をきちんとチェックし、私が作成していた実家の間取図を参考にしながらそれを修正して、最も入念に調査していました。その後2週間も経ずに基本プランは出来上がってきました。

O設計間取りイラスト(一軒楽着3D)  左:1F、右:2F
11月13日、家族を実家に集めて基本プランの説明を受けました。蔵以外は新築とし、二間の幅広い玄関から左は子世帯、右は親世帯、中央は二間和室という、それまで自分たちが思い描いてきたものとは全然異なる間取でした。和室の位置が悪いとか縁側が小さく狭いなどと、早速両親からクレームがつきます。しかし親世帯の居間と寝室を日当りと庭の眺めのいい場所に持ってきたという、他には見られなかった住む人への配慮・心配りが隠されていたのでした。

それに裏側(北側)の外塀まできっちりプランされていて、物置や物干しスペースも考えてありました。窓の取り方も光と風を十分考慮した位置になっており、決してデザイン優先にはなっていなかった様です。

親は不満が先立ちましたが、私と妻はこのプランでもいけそうだという感触を得ました。さすがプロの設計士の発想は素晴らしいと感服しました。
しかし期待された”古民家再生”は、予算・工期の都合からか蔵だけを残すプランに留まりました。

 

第九節 基本プラン其の二

基本プラン提出を11月末頃にしておいてくれと言っておいたので、U建設は一番最後の依頼でしたが、2週間そこそこで基本プランを出してきました。11月28日、実家に家族を集めて話を聞きました。

蔵と納屋・離れは残し、そこは全部章治の仕事場として使います。私としては広々とした作業場が屋内に確保される大きなメリットは生まれますが、それにしてはもったいないし、工夫は感じられません。母屋は新築として上下二世帯で住み分けるプランでした。親側からは縁側が広縁になっていないとか、床の間がないとかの不満が出ていましたが、大きな欠点だったのが、トイレ・洗面がプライベートスペースの奥にあり、客がトイレに行くときには親世帯プライベートリビングを横断しなければならないという点で、これはその場で指摘し修正を求めました。

打ち合せの後に気がついたもう一つの問題点は、親世帯リビングの上に子世帯リビングがあるのですが、それが吹抜けで繋がってしまっていることです。『親子それぞれの共有空間となる様に工夫した』と設計担当の方は言っていましたが、現実問題として、例えばお互い違うTVが見られません。繋がっていて良いのであれば、最初から一つの部屋の方が良いのです。これは単に間取の問題というより、二世帯の生活に対する認識のズレということの方が気にかかりました。

懸案のOMソーラーは母屋の二階屋根にガラスパネルが乗っており、特に工夫ナシ。当然父は反対、いい顔は終始できませんでした。

立面図も出してくれました。北側からの景観は羽島の家とほとんど同じ様な雰囲気です。屋根が入母屋になっていなかった点、父は見逃しませんでした。

打ち合せの数日後、早速変更プランを持ってきました。広縁・床の間は追加、トイレ位置変更は直っていましたが、両世帯リビングの問題は形は変っていましたが残っていたし、何よりOMソーラーに関してはそのままでした。

 

第十節 基本プラン其の三

最後にプランが出来上ったのがF建設です。一番最初に仕様を渡していたのにプラン作成は最後となり、そこでちょっと減点をつけながら、実家で家族共々説明を受けました。12月4日のことです。

F建設間取りイラスト(一軒楽着3D)  左:1F、右:2F
広縁あり、和室二間に床の間と茶道用炉も付き、廊下を挟んで応接間としても使えそうな位置にリビング、概観図は入母屋屋根というところで、唯一親世帯の第一希望をほとんどクリアしていました。子世帯は納屋を改装してリビングとする左右分離二世帯で、納屋の蔵側に一部屋二階を追加して子世帯寝室とすると共に、その追加した二階屋根にOMソーラーガラスパネルを乗せることで、母屋二階屋根にはガラスパネルを載せないプランとなっていました。

玄関を入って奥へ伸びる廊下は広縁と同じく3/4間の巾があり、トイレも同じ巾を取っていて、車椅子での生活も考慮した間取になっていたのは、一つ優位なポイントと言えます。

この間取では最初からケチを付けられるところが少なかったので、床の間の造りとか、茶道用炉の周りの話とか、細部の話を母が持ち出す結果になってしまいました。父も、親世帯リビングが和室と廊下を挟んだ位置にあったことから、「ここは応接間じゃな」と納得していました。応接間自体、父以外は全員不要だ(接客は和室ですればよい)という主張なのですが、父は絶対必要だと譲らず、どうしても今住んでいる家にある応接セットを置きたいと言っていたのです。そういう状況下で今回提示された図面を見ると、部屋の名称は”リビング”となっていたものの、そこをリビングで使うか応接間として使うかは、その部屋の主になる父に任せればよいということになったので、この問題はあっさりクリアできてしまったのです。

また他の2案にないところとして、蔵が一間東に移動してあり、西側の壁は納屋と同じ位置になっていました。奥に入る道幅がこの蔵の角の為狭くなっていることから、気にはなっていたところです。移動するのは良いのですが、それにかかる費用がどれくらいなのかが、やや不安に感じました。

「OMソーラーのガラスパネルがここ(納屋上追加部分)にあっても良いか?」という私の問いに、父は「母屋の上はガラスはないし、母屋と(見た目に)造りが切れている建物だからあっても構わない。母屋の上に無ければ良い。」と答えました。
普通に屋根にガラスパネルを載せたのでは父の了解がまず得られないということを、F建設はよくわかっていたみたいです。どこの見学会へ出かけても、屋根の上のガラスパネルについて不満げな言葉を漏らしていたのを度々聞いていたからでしょう。

納屋の上に増築する子世帯寝室部屋は、OMソーラーのガラスパネル屋根を付ける為の部屋と言っても過言ではありません。しかも実際にはそう大きな集熱面積が取れないので、床暖房が出来る範囲は限定されており、その範囲内でも実際にはボイラーの力を借りることになるでしょう。それを承知でOMソーラー搭載の為、敢て変化球とも言える方法で挑んできたF建設のプランには、正直脱帽でして、OMソーラー採用の可能性がぐっと出てきたのでした。

 

第十一節 依頼先決定

12月12日、基本プラン3つが出揃ったので、家族でどれにするか打ち合せを行いました。この時点では各者共見積は出ていませんし、間取りの変更要望も出していません。でも集まったプランにはそれぞれの特徴がよく見て取れるし、それまで話をしてみてどういう相手なのかもわかっていたので、あまり深入りさせてから断るのも家族が嫌いますから、ここで依頼先を決めてしまうことにしました。3つの図面を前に家族の意見を聞いてみると、あまり議論をすることもなくF建設採用で決まってしまいました。妻はO設計士のデザイン性に魅力を感じていたのですが、屋根が切妻ということで父の要求から外れていました。玄関を入って廊下の右側に二間続きの和室、左側に洋間の応接間・・・こういう間取を取っていたのがF建設プランだけだったので、父にはそれが良かった様です。

後に両親から聞いたのですが、F建設だけが提案してきた図面をカラーで印刷してきたことから、一番設計の完成度が高いようにも思えたそうです。

その場で細かな要望点をまとめて、晩にF建設に基本プラン採用のメールを入れ、プランの修正を求めました。他の2者については断りのメールを入れておきました。O氏はその後メール返信を含め、応答はありませんでした。U建設はその後営業マンが来ましたが、メールを出したことが伝わっていない様でしたので、口頭で断りの旨を告げました。後日U建設の見学会に行って、その時社長に会い改めてF建設で進める事を言いました。社長はOMソーラー協会の中四国の取りまとめをやっている方なのでF建設のこともよく知っており、(まぁしかたがないかな)という顔持ちで聞いていた様に見えました。

 

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